小説「罪の声」感想│人生の闇は大抵、日常の延長線上にある。

「罪の声」塩田武士

塩田武士(しおた たけし)さんの小説「罪の声」を読みました。

1984~85年の日本で実際に起こった事件をモデルに、描かれた作品です。小栗旬さん、星野源さんのダブル主演で映画も公開中です。

以下、小説を読んだ感想です。ネタバレありです。

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小説「罪の声」感想

曽根俊也が、生島望の同級生・天地幸子に会う辺りから「ページをめくる手が止まらない!」状態で一気に読みました。とても面白かったです。

天地さんから望の最期について話を聞く場面はとても印象に残っています。

望がどれほど怖い思いをしたか、そんな状況でも親に迷惑かけまいと取った望の行動、それを天地さんが「健気さ」と表現していたこと、天地さんが自身を今でもずっと責めていること、全てに胸が締め付けられる思いでした。

 

読み終えてふと、改めて表紙を見た時に、それまで見えていなかったもの(=ガイコツの体つきが女性)が見えた時は鳥肌が立ちました。

あの絵は母親・曽根真由美の「罪」を表していたんですね。大胆ですよね。表紙でネタバレ、、匂わせっていうのか?とにかくすごい。


個人的には曽根・母が一番腹立たしい。

一度は正しい道に戻っていたのに自ら再び道を踏み外した、それも我が子を巻き込んで、というのが、なんとも腹立たしい。しかも、自分の人生に終わりが見えてきたから・・・というタイミングで、自分の罪を「あわよくば息子に気付いてもらおう」というのも勝手ですよね。ここまで来たら墓場まで持っていって欲しいものです。

とは言え、真由美の父親も、俊也の父方のおじいちゃんも、善良な一般市民が無実の罪を着せられたまま・・・というのは、自分にもいつか降りかかってくるんじゃないか、って考えると恐ろしいですね。落とし物を拾うのも躊躇わなきゃいけないような世の中って悲しすぎる。

 

阿久津と曽根俊也が初対面を果たすシーンは最高に面白かった。

動揺する俊也と、人当たりよさそうに見えて実際には絶対引かない阿久津、2人の攻防に手に汗握りました。「あなたの伯父さんに会ってきます。」には悶えたなぁ。そんな “とっておき” を用意していたとは。阿久津やるなぁ・・・とキュンとしました。笑

 

あとは、曽根達雄の恋人・ソフィーと阿久津が2度目に会うシーンも好きです。

ソフィーが好き。「とても有益な仕事だわ。季節が変われば、私の答えも変わると、あなたは言いたいわけね。」ってセリフがすごく好き。こんなユーモア溢れる返しができるような女性になりたいものです。彼女が聡明な方なんだなってことが一瞬で分かる洒落たセリフ。

【事件が真相へ辿り着く= 彼女の日常が奪われる】ことなんだな、って思ったら切なくて。達雄とソフィーで1本の映画ができそうなくらい2人の関係性がドラマチックです。恋人の影の部分に薄々気付きながらも、見ないふりをして過ごしてきたのは失いたくないから。「もう何度も見てるけど公園の景色を見るわ」と、言外に「一人にして」と言っていたシーンがすごく好きです。


ちなみに、「中国人のことは存じ上げません」のカラクリはすぐに分かりました。私も海外にいたころ似たような経験があったので、コリンも間違えたんだなってピーンときた。同じアジア人同士でも区別がつかないこともあるくらいなのに、それ以外の国の方からしたら見分け付かなくても当然です。

イギリスはいつか行ってみたい国🇬🇧 行くならやっぱりロンドン!ビッグベン!って思っていたけれど、シェフィールドもキレイな街並みで素敵ですね!行ってみたい! 海外旅行に自由に行ける日々よ、早く戻って来ーい!!

原作と映画の相違点

映画も観たので、相違点を少々。最初に言っておくと「原作贔屓」です。相違点を見たって仕方ないことは分かっているのですが、それでも書く。映画「罪の声」が好きな方にとっては、その気持ちに水を差してしまう内容かもしれませんので、先に言っておきます。

 

書きま~す!

 

 

まず言いたいのが、母・真由美も、伯父・達雄も、犯行に至った動機の “薄っぺらさ” こそがいいのに!ってこと。

映画では、母親は自己保身のため(?)とはいえ、テープの存在は隠し通そうとしていた(俊也が偶然発見)し、俊也に責められた時、後悔の涙を流していて、なんだか自分のイメージとは違うなと思った。原作を読んだ時は、もっと淡々と、なんなら今でも「自分が間違っていた」とは思いきれていないような態度で、どうしようもないな・・・って思ったし、そんな母親のことを「想像力が足りない」と表現していた俊也の感覚がすごく良いなと思ったんだけど。

伯父も、映画では「生島一家をきちんと逃がせた」と思っていたらしく、生島家の悲しい現状を知って衝撃を受けるシーンがあったり、最後も逃亡しちゃうし… なんだかあの辺は蛇足だなと個人的には思いました。(ちなみに原作でも逃亡したとも受け取れる書かれ方はしていましたね。)

 

さらには、ソフィー

先にも書いた通り、達雄の恋人・ソフィーは原作を読んだ時、好きな登場人物でした。恋人の影の部分に薄々気付きながらも、恋人との日常を失いたくないが故に達雄のことをかばっていたのに。気付かないふりをしていたその “弱さ” がいいのに。「もう何度も見てるけど公園の景色を見るわ」のシーンがすごく好きなのに!

映画では阿久津が2度目にイギリスへ行った時には、あの人は「fossil(=化石)だ」と、険しい顔で言っていて、すでに破局している風だったのが、謎の手の加え方すぎて残念でした。ソフィーからは達雄に対して嫌悪感すら感じた。これでは1回目渡英時の「“中国人”とはお付き合いしていません。」のセリフが生きてこない。

原作のソフィーも達雄の罪が発覚したら達雄のこと「化石」って言うのかな。私がソフィーを美化しすぎなのか? 大好きな登場人物・シーンなだけに残念でした。

 

望が亡くなるシーンは、映画の方が、あれでもまだ少しだけマイルドに描かれていましたね。原作では、もっと長時間追いかけまわされた挙句、拉致され、高いところから突き落とされるという、考えるだけで恐ろしい最期。そんな状況にありながらも親に「警察に電話して良いか」と確認する(=親に迷惑かけたくない)健気な子なのに、映画では現状に我慢しきれず、母と弟を置いて逃げ出そうとしたから捕まった・・・って、あの状況じゃそれが当たり前なのかもしれませんが、なんか普通の子になっていたのがなんとも。


そして、「し乃」の板長が口軽すぎるでしょ!っていうね。笑

あと、俊也の父・光雄が、どうしても善良な人には見えなくて😂(アンナチュラル大好きなので)

それから、鳥居さんのパワハラ上司っぷりが軽減されておりました。個人的には阿久津に「イギリスに紅茶買いに行ったんか?」ってセリフは入れて欲しかった🤣


原作の通り全て、なんて時間に制限がある映画では無理なことも分かってはいるんですけどね。時間だけではなくて、私には想像もつかないような様々な制約がある中での取捨選択だったであろうことも分かっているつもりです。

「原作を先に読むか、映像を先に見るか」問題

私の中での長きに渡り勃発していた「原作を先に読むか、映像を先に見るか」問題に決着がついた気がします。

 

「映像が先」がいいんじゃないかな。

前は、映像を先に見ると、文字を読んでいても頭の中で役者さんが動き出すから、本当に文章を読めているのかよく分からなくなるので「原作が先」の方がいいのかな~なんて思っていました。

でも、原作を先に読むと、今度はどうしても “原作と映像の相違点” ばかり探してしまって(上記の文章然り。笑)、別にそんなことしたくないのに、映像に対して否定的な意見ばかり出てきちゃうのも残念だ!…と言うわけで、「映像が先」という結論に至りました。


本作の前に読んだ「蜜蜂と遠雷」は映画を先に見ました。すごく面白かったので、鑑賞後に早速小説を読んだら、恩田さんの文章力に自分も “肥えた耳” を持ってコンクールに参加しているような、ゾクゾク・ワクワクする体験ができて、映像も小説もどちらもすごく楽しむことができて最高でした。

話ずれちゃうけど、風間塵や栄伝亜夜の演奏シーンは読んでいて本当に心躍ったなぁ。演奏のシーンこそが面白かったんですよね。私のイメージだと、こうゆうシーンはささ~っと斜め読みしたくなるイメージだったんですけど違った。演奏のシーンこそが面白かった!!

風間塵の登場シーンも最高でした。亜夜がどんどん覚醒していく様も、天才たちの演奏の凄さを “その他の人たちの感想” によって表現している所も、本当にすごい小説だなって思った。小説からパワーを感じた初めての経験でした。映画では2人が夜に「月」のメドレーを連弾するシーンがすごく好き!!

 

話ズレましたが、なので、これからは「映像を先」に見ることにします。

「蜜蜂と遠雷」も「罪の声」も「BUTTER」も、今年は『余韻のすごい』小説にたくさん出会えて大充実です。

本作を読もうと思ったきっかけ

誰も興味ないと思うけど書く!笑

本屋大賞にノミネートされた頃から、ずっと気になってはいたけれど着手せずにいた本作。このタイミングで読もうと思ったキッカケは星野源さんでした。

なにせ、ドラマ「MIU404」の志摩さんがかっこよかった!!🤩

MIUを見ていて、綾野剛の伊吹よりも「志摩さーん❣」ってなるだなんて、4話くらいまでは思いもしませんでした。というか、大変失礼を承知で言わせていただくと、星野源をカッコイイ!と思う日がやってくるなんて、あまり考えたこともありませんでした。笑

星野さんの曲は結構聴いていたし、エッセイも読んだ事があって、アーティストとして好きではあったんですけどね。カッコイイー❣ って思う日が来るのは想定外でした。

というわけで、映画「罪の声」を絶対観に行くぞ!と思い、公開に先駆け本作を読むことにしました。


映画では、生島総一郎に「あなたはどんな人生を送って来たんですか?」と聞かれた時の、何も答えられない表情がすごく良かったです。一緒に観に行った母は「小栗旬ももちろんだけど、星野源はやっぱり演技上手だね!」と大満足の様子でした。(「やっぱり」って思ってたんだ🙄と意外でした。)逃げ恥SP楽しみだ!

 

なんかグダグダになってきましたが、小説も映画も「罪の声」オススメです。気になっている方は是非、読む or 観てみてください。両方なら、是非 “観る” 方から!笑 私は、できることなら、小説読んだ記憶を消してもう一度映画を観たい!!絶対面白かったし感動したに違いない。

 

 

☆11/17、30、12/4に拍手いただきいました!ありがとうございました☆

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